SMSの冗長化は必要か

公開日:2026/11/05

この記事の要点

配信会社を2社にしても、携帯電話会社の側の障害では、どちらの会社から送っても届きにくくなります 2社にするなら主と予備を決め、どちらの会社から送るかを設定で切り替える作りにします 予備の会社には、送らない月も最低料金や固定費がかかることがあります。1年分の費用で見積もります 2社にするかは、認証が止まったときに何が止まるかと、予備の費用・手間を比べて決めます

SMSの冗長化は必要か(予備の配信会社を置く作り方と、置かないときの備え)
喜喜多陽平 / Yohei Kita株式会社FID マーケティング部 リーダー/ULTIQUE SMS 事業責任者無印良品で2年半、TOKYO BASEで2年、小売の現場を経験したのち、株式会社FIDに入社。法人向けSMS配信サービス「ULTIQUE SMS」のセールスとマーケティングを担当し、導入や他社サービスからの乗り換えのご相談を受けています。

SMSの冗長化(予備の配信会社を用意して、2社から送れるようにすること)をするかどうかは、SMS認証が止まったときの損失と、予備を置く費用・手間を比べて決めます。2社にするなら、ふだん送る主の会社と予備の会社を決め、APIの返事と結果の通知(配信会社から返る、届いた/届かなかったの知らせ)を見て切り替える条件を先に決めておきます。2社にしない場合も、メールなど別の手段で認証できる道を残しておけば、配信会社が止まっている間も利用者はログインを続けられます。

SMSの冗長化で備えられる障害と、備えられない障害

SMSは、自社のシステムから配信会社に送信を頼み、配信会社が携帯電話会社の網を通して利用者のスマホに届けます。途中のどこかが止まると、認証コードは届きません。配信会社を2社にして防げるのは、そのうち配信会社の側で起きる障害です。

止まる場所配信会社を2社にすると
配信会社のAPIやシステム予備の会社から送れる
配信会社から携帯電話会社までの経路予備の会社の経路が動いていれば送れる
携帯電話会社の網どちらの会社から送っても、同じ網を通るので届きにくい
自社のシステム防げない

表は、SMSが届くまでの経路のうち、どこが止まると2社目で補えるかを整理したものです。携帯電話会社の網が止まると、送る配信会社を替えても、最後に通る網は同じです。その場合に備えられるのは、SMS以外の手段だけです。2社が同じ中継の事業者を通している場合は、その事業者の障害で2社とも届きにくくなります。

通信サービスの事故は、毎年報告されています。総務省の[令和8年版 情報通信白書(電気通信サービスの事故の発生状況)](https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd212290.html)によると、2024年度に電気通信事業者から四半期ごとに報告された事故は6,713あり、そのうち、電気通信事業法で「遅滞なく」報告することが義務づけられた重大な事故は6でした。SMSに限らない、電気通信サービス全体の数字です。

配信会社を2社にするときの5つの手順

2社にするときは、障害が起きてから予備の会社と契約するのでは間に合いません。新しい会社では、申し込み・審査・送信元番号の登録を経て、はじめて送れるようになるからです。次の順番で、ふだんのうちに準備します。

1. 主の会社と予備の会社を決める

ふだんの送信は主の会社から送り、予備の会社は止まったときだけ使います。2社に半分ずつ流す作りもありますが、2社分の結果を見比べることになります。主と予備を分けておけば、ふだん見る結果は主の会社の分だけで済みます。

確かめ方:開発と運用の担当者が、いまどちらが主の会社かを同じ答えで言えるかを見ます。

2. 予備の会社でも、申し込みと送信元番号の登録を済ませる

予備の会社でも、申し込みと審査、送信元番号の登録を終え、すぐ送れる状態にしておきます。送信元の表示が2社で違うと、利用者には知らない番号から認証コードが届くことになります。登録できる番号と、受け取る人の画面での表示を、2社で並べて確かめてください。

確かめ方:社内の携帯電話番号に2社から送り、送信元の表示を見比べます。

3. どちらの会社から送るかを、設定で切り替えられる作りにする

送信の処理を、設定を1か所変えればもう一方の会社のAPIを呼ぶ作りにします。SMS APIの乗り換え手順で書いた、一部の送信から新しい会社に移すための作りと同じものです。乗り換えのときに作ってあれば、そのまま予備への切り替えに使えます。結果の通知の受け取りや、届いたかどうかの判定も、2社分を用意します。

確かめ方:テストの環境で設定を切り替え、予備の会社から送ったSMSの結果の通知が、自社のシステムに届くかを見ます。

4. 切り替える条件を、APIの返事と結果の通知で決める

予備に切り替えるかどうかは、主の会社のAPIの返事と、結果の通知を見て判断します。たとえば次のような状態です。

結果の通知は、ふだんでも遅れて返ることがあります。1通ごとに「通知が来ないから予備で送り直す」作りにすると、通知が遅れていただけの1通目と、送り直した2通目がどちらも届き、利用者の手元にコードが2つ並ぶことがあります。切り替えは1通ごとではなく、一定の時間の結果をまとめて見て、担当者が設定を変える形にしておけば、送り直しのせいで同じ人にコードが2つ届くことは防げます。

確かめ方:ふだんの「届かなかった」の割合と、通知が返るまでの時間を、1か月分記録しておきます。基準がないと、おかしいかどうかを判断できません。

5. 予備の会社からも、定期的に送って確かめる

一度も使っていない予備は、いざというときに動くとは限りません。APIに接続するIDやパスワードが変わっていたり、自社のサーバーを入れ替えたのに、接続元のIPアドレスの登録が古いままだったりします。月に一度は、予備の会社から社内の番号に送って確かめます。

確かめ方:確かめた日と、結果の通知が届いたかを記録に残します。

予備の配信会社にかかる費用

予備の会社は、送る通数が少なくても費用がかかります。見積もるときは、月ではなく1年分で並べると、2社にする負担が分かりやすくなります。

費用の種類中身見積もりのときに確かめること
初期費用申し込みやAPI連携のときにかかる費用API連携にも費用がかかるか
月額の固定費・最低料金送らない月もかかる費用配信がない月にいくらかかるか
送信元番号の費用番号の登録や表示のオプション2社で同じ表示にするための費用
開発と運用の手間2社分の送信・結果の通知の作りと、定期的な確かめ自社の工数として見込む

料金の比べ方はSMS認証の料金とAPIの比べ方にまとめています。表の下の2つは見落としやすい費用です。送信元番号の費用はオプションの欄に分かれていることがあり、開発と運用の手間は配信会社の料金表には出てきません。予備の会社の月額だけを見て決めると、ここが抜けます。

2社にしないときの備え:SMS以外の手段を残しておく

配信会社を2社にしない場合でも、SMSが止まったときに利用者が何もできない状態は避けられます。手軽なのは、認証コードをメールでも受け取れる道を残しておくことです。この手段なら、携帯電話会社のSMSが止まっていても、Wi-Fiなど別の回線からメールを受け取れる利用者はログインを続けられます。

どの手段を使うかは、SMSで何を確認しているかで決めます。電話番号を持っていること自体を確かめたい場面では、メールに替えると、その確認ができなくなります。新規登録とログインで、使ってよい手段を分けて決めておいてください。届かないときの原因の切り分けは、SMS認証が届かないときに確かめることに書いています。

2社にするかどうかの決め方

2社にするかどうかは、次の3つの問いで考えます。

1. SMS認証が止まったら、何が止まるか:新規登録だけか、毎回のログインや決済の確認まで止まるか

2. SMS以外の手段で、止まった時間をしのげるか:メールなどで認証できる利用者が、どれくらいいるか

3. 予備の費用と手間を、誰が持つか:1年分の費用と、定期的に確かめる担当者を用意できるか

1で毎回のログインや決済まで止まり、2でしのげる利用者が少ないなら、2社にする理由があります。さらに3の1年分の費用と、確かめる担当者を用意できるなら、2社目を置きます。新規登録だけが止まり、メールでしのげるなら、別の手段を整えるほうが先です。

私の考え:まず別の手段、2社目はそのあと

私は、SMS認証を使う中小のSaaSやアプリなら、まずメールなどSMS以外の手段を整え、そのうえで認証が止まると困る場面が多いときに2社目を置くべきだと考えています。2社目で防げるのは配信会社の側の障害だけで、携帯電話会社の網の障害には効きません。別の手段なら、どちらの障害のときも、メールを受け取れる利用者はログインを続けられます。

もう1つ、予備は動くことを確かめ続けないと、いざというときに使えないことがあります。月に一度、予備から送って確かめる担当者がいないなら、2社目の契約だけを先にしても、備えにはならないと見ています。

ULTIQUE SMSを予備に置く場合の費用

ULTIQUE SMSの場合、初期費用と月額固定費は0円です。配信がない月も、最低利用料金1,000円(100通分込み・税抜)はかかります。標準の送信元番号の設定で月100通までなら、料金はこの1,000円のままで、手順5で月に一度送るテストのSMSもこの中に収まる計算です。

標準の設定では、受け取る人の携帯電話がSoftBankの場合、送信元は「253000」または「253001」と表示されます。すべての携帯電話会社で指定の番号を表示したい場合は、有料のオプションがあり、その分が加わります。申し込みのときには審査があり、用途もお聞きします。

SMSの冗長化のQ&A

SMSの冗長化は、中小のSaaSにも必要ですか?

すべてのサービスに必要とは限りません。SMS認証が止まったときに何が止まるかで決まります。毎回のログインや決済の確認までSMSに頼っていて、メールなどでしのげる利用者が少ないなら、予備の配信会社を置く理由があります。新規登録だけが止まるなら、先にSMS以外の手段を整えるほうが、少ない費用で備えられます。

配信会社を2社にすれば、携帯電話会社の障害にも備えられますか?

携帯電話会社の網そのものの障害には、備えられません。どの配信会社から送っても、最後は同じ携帯電話会社の網を通って利用者に届きます。配信会社を2社にして防げるのは、配信会社のシステムの障害と、2社で別々に通している経路の障害です。携帯電話会社の網の障害には、メールなどSMS以外の手段で備えます。

予備の配信会社に切り替える条件は、どう決めればいいですか?

主の配信会社のAPIの返事と、結果の通知をもとに決めます。送信のAPIがエラーを返し続けている、「届かなかった」の割合がふだんより明らかに高い、結果の通知がふだんの時間を過ぎても返らない、といった状態です。ふだんの割合と時間を1か月分記録しておくと、おかしいかどうかを判断できます。

予備の配信会社には、送らない月も費用がかかりますか?

かかる配信会社があります。予備の会社を選ぶときは、配信がない月にいくらかかるかを聞き、1年分で見積もります。送信元番号の費用と、2社分の開発・運用の手間も、別に見込んでおきます。

SMS認証が止まったとき、SMSの代わりに何で認証できますか?

登録したメールアドレスに認証コードを送る方法と、スマホの認証アプリでコードを表示する方法があります。電話番号を持っていることを確かめたい場面では、メールに替えると、その確認ができなくなります。新規登録とログインで、使ってよい手段を分けて決めておきます。

ULTIQUE SMSを主・予備のどちらかで使う場合

ULTIQUE SMSは、国内網(国内回線)で配信します。予備を選ぶときは、いまの配信会社がどの回線を使っているかを確かめ、2社の回線が同じかどうかを見ておきます。回線の違いはSMSの国内直収接続・国内網・海外網の違いにまとめています。

送信ごとの「届いた/届かなかった」は、指定したURLへ結果の通知(コールバック)で返ります。通常は配信後数秒〜数分で、携帯電話会社の状況によって遅れることがあります。手順4の切り替えの条件のうち、「届かなかった」の割合と通知が返るまでの時間は、この通知をもとに見られます。

セキュリティのため、接続元のIPアドレスを登録していただいています。主と予備のどちらで使う場合も、申し込みのときに送信するサーバーのIPアドレスを伝えておきます。サーバーを入れ替えるときは、登録しているIPアドレスも変える必要があります。どちらの会社から送るかは、自社のシステムの設定で切り替えます。

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