SMSポンピングとは

公開日:2026/11/05

この記事の要点

SMSポンピングでは、不正をする側がボットで登録や再設定の画面からSMSを大量に送らせ、料金の高い番号や海外の番号を宛先にして、不正に加わった通信会社と料金を分け合います 日本国内の携帯電話番号だけに送っていても、実在する番号への水増しは起こりえます ボットの依頼は自社のサーバーを通って届くので、配信会社を選ぶだけでは止まりません 対策は、送信回数と番号の国の制限やCAPTCHAで送る前に止めることと、送ったSMSの数と認証を終えた数を毎日比べることの組み合わせです

SMSポンピングとは(料金を水増しするポンピング詐欺から、SMS認証を守る対策)
喜喜多陽平 / Yohei Kita株式会社FID マーケティング部 リーダー/ULTIQUE SMS 事業責任者無印良品で2年半、TOKYO BASEで2年、小売の現場を経験したのち、株式会社FIDに入社。法人向けSMS配信サービス「ULTIQUE SMS」のセールスとマーケティングを担当し、導入や他社サービスからの乗り換えのご相談を受けています。

SMSポンピング(SMSポンピング詐欺とも呼ばれます)は、ボットなどでSMS認証の送信を大量に起こさせ、送った会社に必要のない送信料金を払わせる不正です。SMSトラフィック・ポンピングとも呼ばれます。送信の記録に、新規登録から送られた知らない番号あての認証コードが夜中に数千通並んでいたら、その分の料金は自社の請求書に載ります。防ぐには、送る前に回数や番号の国を絞る制限と、送ったあとの異常の見張りを、自社のサービスの側で組み合わせます。

SMSポンピングとは:認証のSMSを水増しして、料金を払わせる不正

アイルランドの国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は2025年6月17日の注意喚起で、SMSポンピングを、SMS認証の機能(認証コードや新規登録の流れ)を悪用し、料金の高い番号や海外の番号へ大量のSMSを送らせる不正だと説明しています。artificial traffic inflation(人工的に水増しされた送信)などの別名も挙げています(NCSC Ireland「SMS Pumping」、2026年11月5日確認)。英国のNCSCは、同じ不正をAIT(Artificially Inflated Traffic)と呼んでいます(NCSC「Business communications - SMS and telephone best practice」、2026年11月5日確認)。SMS認証そのものの仕組みは、SMS認証とはにまとめています。

SMSポンピングの仕組み:誰が、どこで得をするのか

アイルランドのNCSCの注意喚起では、仕組みを3つの段階で説明しています。

1. 送信を起こさせる:自動のプログラムやボットが、SMSを送る機能を何度も呼び出す

2. 番号を選ぶ:送るときの料金が高い番号(料金の高い番号帯や、海外の番号)を宛先にする。番号は不正をする側や、その仲間が持っている

3. 料金を分け合う:不正に加わった通信会社と組み、水増しされた送信の料金の一部を受け取る

スイスの国家サイバーセキュリティセンターは2022年12月20日の週報で、アプリの新規登録を狙った例を載せています。海外の番号を使った数十万回の自動の登録で、そのたびに認証のSMSが送られました(NCSC(スイス)「Week 50: Attacks on app providers via "SMS traffic pumping"」、2026年11月5日確認)。

お金を目当てにしない形もあります。アイルランドのNCSCは、狙った会社の費用を増やすこと自体が目的の場合もある、と書いています。

SMSポンピングに狙われやすい画面

狙われるのは、ログインしていない人でもSMSを送らせられる画面です。

APIの安全性をまとめている非営利の団体OWASPは、パスワードの再設定のSMSを例に挙げています。再設定のAPIがプログラムから数万回呼ばれ、数分で数千ドルの損になる、というたとえです(OWASP API Security Top 10 2023「API4:2023 Unrestricted Resource Consumption」、2026年11月5日確認)。数字は説明のための例で、被害の集計ではありません。

私の考え:送る前の制限と、送ったあとの見張りは、セットで持つ

私は、SMS認証を入れたサービスでは、送る前の制限と、送ったあとの見張りを、最初から両方持っておくべきだと考えています。回数の制限だけだと、制限の内側でゆっくり水増しされたときに気づけません。見張りだけだと、気づくまでに送った分の料金はもうかかっています。

SMSポンピングの入口は、配信会社のAPIではなく、自社の登録や再設定の画面です。ボットの依頼も、自社のサーバーを通って配信会社に届きます。どの配信会社を使っていても、自社の画面での対策は要ります。

ULTIQUE SMSで認証のSMSを送る場合

ULTIQUE SMSの場合、送れるのは日本国内の携帯電話番号だけで、海外の番号には送れません。料金がかかるのは、送信先に届いたSMSだけです。

管理画面では、接続できるIPアドレスを制限できます。API連携では、セキュリティのため接続元のIPアドレスを登録していただいています。自社のサーバー以外からAPIに接続させないための設定です。

同じ電話番号あてに短い間に多くのSMSを送ると、携帯電話会社の側で迷惑なメッセージと判定され、送れなくなることがあります。ULTIQUE SMSの送信の速さは、通常は1秒あたり約4〜5通です。

国内の番号だけに送ることや、IPアドレスの制限で、SMSポンピングが防げるとは言えません。国内の実在する番号への水増しは起こりえて、届けば料金がかかります。ボットの依頼は自社のサーバーから届くので、IPアドレスの制限では止まりません。次の5つの対策は、ULTIQUE SMSを使う場合も自社で入れてください。

SMSポンピングの対策:送る前に止める5つのこと

英国・アイルランド・スイスの公的機関とOWASPの資料に出てくる対策を、5つの手順にまとめました。出典は各手順の括弧に書いています。

1. 送信回数を、番号ごと・接続元ごとに制限する

同じ電話番号への送信と、同じIPアドレスからの依頼に、時間あたりの上限を置きます(アイルランド・英国のNCSC)。再送は、回を重ねるごとに待ち時間を倍々に延ばします(アイルランドのNCSC)。テスト用の番号で再送ボタンを続けて押し、上限で止まるかを確かめます。

2. 送る番号の国と形を絞る

利用者が日本の人だけなら、日本の番号以外には送らない作りにし、番号の桁数と形も送る前に確かめます(英国・アイルランドのNCSC)。海外の番号や桁の足りない番号で試し、送る処理で止まるかを見ます。

3. CAPTCHAなどで、ボットの依頼をふるい落とす

CAPTCHA(人が操作しているかを確かめる仕組み)を、SMSを送る公開の画面すべてで、送る前に通してもらいます(アイルランドのNCSC)。テストでは、CAPTCHAを通らずに送信のAPIを直接呼び、断られるかを試します。

4. アカウントの確認より前にSMSを送らない

パスワードの再設定では、登録のない番号にはSMSを送らない作りにします。画面の表示は、登録の有無で変えません(変えると、どの番号が登録済みかを探られます)。新規登録でも、SMSの確認はCAPTCHAのあとに置きます(アイルランドのNCSC)。登録のない番号で再設定を試し、送信の記録が増えなければ合格です。

5. 費用の上限か、通知を決めておく

配信会社と費用の上限を決め、上限を設けられないときは請求の通知を設定します(OWASP、スイスのNCSC)。配信会社に上限の設定がなければ、自社で1日の送信数の上限を決めて止めます。

送ったあとの見張り:SMSポンピングに気づく4つのサイン

送る前の制限をすり抜ける水増しもあります。次の表は、アイルランドのNCSCが挙げる、気づくための4つのサインです。

見るところ水増しを疑うサイン
SMSの送信数と新規登録の数登録が増えていないのに、送信数だけが急に増えた
送り先の国これまでほとんど送っていなかった国への送信が出てきた
依頼の接続元同じIPアドレスや、近いIPアドレスからの依頼がくり返される
宛先の番号頭の数字がそろった、でたらめな番号がまとまって並ぶ

英国のNCSCは、送ったSMSのあとに利用者の入力が続いているか(認証を終えた割合)を見るよう書いています。送ったSMSの数と、認証を終えた数を毎日並べておけば、ふだんの割合から外れた日がすぐ分かります。

SMSポンピングが起きたときの手順

起きたときは、アイルランドのNCSCの手順に沿って動きます。

1. 狙われた画面やAPIを、いったん止めるか、回数をきつく制限する

2. SMSの送信の記録、IPアドレス、端末の情報、地域を調べ、どこまで広がったかをつかむ

3. 配信会社に知らせる(調査を手伝ってもらえる場合がある)

4. 狙われた番号帯や国への送信を止める

5. 疑わしい地域ではメールでの確認に切り替えるなど、SMSを送る流れを見直す

6. 警察に被害を届け出る

ULTIQUE SMSで結果の通知を受け取り、認証の完了数と比べる場合

ULTIQUE SMSのAPIでは、送信ごとに、届いたかどうかの結果が指定したURLへ自動で返ります(コールバック)。返ってくる通知には、配信結果や課金の通数などが入ります。送った通数や結果は、管理画面のダッシュボードでも確かめられます。決まった額を超えたときに知らせる機能はないため、確かめる日を決めておきます。

この通知を、管理IDと自由項目3つで自社の会員IDとひも付けて数えれば、送ったSMSのうち認証を終えた数の割合を自社で出せます。不正な送信に気づいたときは、ULTIQUE SMSを運営するFIDにご連絡ください。調査や送信の停止に協力します。携帯電話会社からFIDに警告が届くこともあり、警告が重なる場合は、FIDから契約を解除することがあります。

料金は、初期費用と月額固定費が0円で、最低利用料金は月1,000円(100通分込み・税抜。配信がない月もかかります)です。認証のSMSの料金の見積もり方は、SMS認証の料金とAPIの比べ方にまとめています。

SMSポンピングのQ&A

SMSポンピングとは何ですか?

ボットなどでSMS認証の送信を大量に起こさせ、送った会社に必要のない送信料金を払わせる不正です。料金の高い番号や海外の番号を宛先にし、不正に加わった通信会社と料金を分け合う形が多い、とアイルランドの国家サイバーセキュリティセンターは説明しています。

日本国内の携帯電話番号にしか送らなければ、SMSポンピングは起きませんか?

起こりえます。海外の番号を狙う形は止められても、ボットが実在する国内の番号を次々に入れれば、そのSMSは届き、料金がかかります。国内の番号だけに送る場合も、送信回数の制限やCAPTCHAは要ります。

SMSポンピングに気づくには、どの数字を見ればいいですか?

送ったSMSの数と、認証を終えた数の割合を毎日見ます。登録の数が増えていないのに送信数だけが増えた日や、ふだん送らない国への送信が出た日も、水増しを疑うサインです。

認証コードの再送ボタンには、どんな制限をかければいいですか?

上限を置くのは、同じ電話番号への送信の回数と、同じIPアドレスからの依頼の回数の2つで、どちらも時間あたりで数えます。アイルランドの国家サイバーセキュリティセンターは、再送のたびに待ち時間を倍々に延ばす方法も挙げています。

SMSポンピングの被害にあったら、最初に何をすればいいですか?

狙われた画面やAPIを止めるか、送信の回数をきつく制限します。そのあと送信の記録を調べ、配信会社に知らせます。

次に確かめること

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